足を棒にしてマスクとトイレットペーパーと消毒液を探し回り、涙を堪える気力も潰えそうだった昨冬。日頃の喧騒と目に痛いほどの明かりが嘘のように消え去った飲み屋街を後にして、持て余した時間という恐怖に耐える生活にもくたびれ果てた今冬。自分にはタバコを吸う唇も酒を飲み干す喉もギターを弾く指もないから、音楽を聴く耳と心を落とすための言葉を冷たいパソコンの中で動かすしかなかった毎夜毎夜毎夜。全て元通りにはならないかもしれないけれど、次に瞼を開けた時にはほんの少しだけマシな景色がありますように。あらゆる境目が光で吹き飛ぶ春がもうすぐ来ると信じて。