2021年の現在、アール・クルーがどういう位置付けなのかは分からないが、多くのギターファンはイージーリスニング的なフュージョン音楽のアーティストとして見ているのではないだろうか。確かに彼の音楽は1976年のデビュー直後から天気予報や道路交通情報のBGMとしてかなり使われているし、ガットギターを指で弾くというスタイルだけに、かなりソフトな曲が多いのは間違いない。特に日本でも多くの人気を集めた4thソロアルバム『マジック・イン・ユア・アイズ』(’78)あたりからはほぼイージーリスニング路線で勝負しているので、それ以降に彼の音楽に魅せられた人にとってはハートウォーミングな優しいギターが何よりの癒やしになっているのも事実だろう。しかし、ブルーノートからリリースしたデビューアルバムの『アール・クルー』(’76)や、2ndアルバムの本作『リヴィング・インサイド・ユア・ラブ』で聴くことのできる攻めのギタープレイは、ワイルドな瑞々しさにあふれている。