シンガーソングライター系のアーティストが脚光を浴びた70年代初頭、その内省的な作風と繊細そうな風貌から多くのリスナーを惹きつけたのがジャクソン・ブラウンである。彼は新興レーベルのアサイラムから72年にデビュー、3作目の『レイト・フォー・ザ・スカイ』(‘74)は滋味あふれる仕上がりで、完璧とも言えるSSW系サウンドを完成させている。リリースされてから半世紀近くになるが、今でもアルバム全曲、歌詞を見ずに歌える人も少なくないだろう。パンクとAOR/フュージョンが一世を風靡する70年代中頃になっても、彼の作風はデビュー時とさほど変わることはなかったが、ブルース・スプリングスティーンをスターにしたことで知られるジョン・ランドウにプロデュースを任せた4作目の『プリテンダー』(’76)は、豪華なサポートミュージシャンを起用して重厚かつ奥深いサウンドに仕上げている。このアルバムは全米チャートで5位まで上昇、彼のそれまでのキャリアでもっとも成功した作品となった。そして、本作『孤独なランナー(原題:Running On Empty)』は彼の5作目となるアルバムであり、ライヴ盤にもかかわらず全曲新曲ばかりを収録した異色の作品ではあるのだが、『プリテンダー』を上回る好セールスを記録した。