1976年にアイルランドのダブリンで結成されたU2は、83年リリースの3rdアルバム『WAR(闘)(原題:War )』が全英1位を獲得、キレの良いリズムと表現力の豊かなヴォーカル、そしてメッセージ性の高い歌詞を持ち味に、硬派のロッカーとして活動していた。メンバー全員がパンクに影響されているのだが、アイルランドに拠点を置いていたために、イギリスで同時代に活動していた他のグループとは一線を画すサウンドであった。今回取り上げる6thアルバム『ヨシュア・トゥリー』(‘87)はロックファンなら誰もが知る彼らの代表作であり、ロック史に残る傑作である。本作はそれまでのビートの効いた若々しいサウンドから、自身のルーツを模索しつつ新たな段階へと踏み出そうとした真摯な記録であると言えるかもしれない。