70年代中期にパンクロックが登場してから、数年後にはシンセサイザーの急速な発展によってエレクトロポップの時代を迎える。70年代末〜80年代初頭の洋楽と言えば、シンセを多用したディスコサウンドかテクノが全盛であった。しかし、パンクロックの精神は死んでおらず、ポストパンクのアーティストたちはインディーズの世界で泥臭く活動していたのである。76年にマンチェスターで結成されたジョイ・ディヴィジョンもまた、初期のパンクロックに影響されたグループだ。79年にリリースしたデビューアルバム『アンノウン・プレジャーズ』では暗鬱ながらもテンションの高い演奏を聴かせ、インディーズの新人にもかかわらず好セールスを記録した。今回取り上げる『クローサー』(’80)は彼らの2枚目のアルバムである。本作リリースの2カ月前、ヴォーカルのイアン・カーティスが自死するという衝撃的な事件がゆえに彼らは伝説になるのだが、イアンの心の内を曝け出すような歌詞と、人間が持つ負のイメージ(憂鬱、挫折、失敗、喪失、抑圧など)をサウンドで表現するその真摯さは、今でも圧倒的な存在感で迫ってくる。
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music.jp 本配信情報は2020年2月07日時点のものです。
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